「超」入門 失敗の本質 鈴木博毅①


テーマ:なぜ「戦略」があいまいなのか?

●戦略の失敗は戦術で補えない

○戦略とは「目標達成につながる勝利」を選ぶこと

・大局的な戦略とは「目標達成につながる勝利」と「つながらない勝利」を選別し、「目標達成につながる勝利」を選ぶこと。米軍を抑止する効果のない17もの島に上陸占拠した日本軍は、目標達成につながらない勝利を集めており、大局的な戦略を持っていなかったと判断できる。

○戦略の失敗は戦術で補えない

・「ガラパゴス化」という言葉は、孤立する日本製品の独自の進化を指す時によくつかわれてきたが、いくら高度な機能を備えていても、標準規格を海外企業に独占されてしまい、最終的にシェア争いで敗れてしまえば、最終的な勝利にはつながらないことを意味する。

・戦略とはいかに「目標達成につながる勝利」を選ぶかを考えること。日本人は戦略と戦術を混同しやすいが、戦術で勝利しても、最終的な勝利には結び付かない。

●「指標」こそが勝敗を決める

○日本軍と対立した石原莞爾の勝利の戦略

・石原…「持久総力戦」という発想。日本軍…「決戦戦争」という発想。

・石原の指標…国家の国力、生産補給力で勝利が決まる。日本軍の指標…どこかの戦場で大勝利をすれば勝敗が決まる。

・戦略とは「追いかける指標」のことであり、戦略決定とは「追いかける指標を決める」ことであるとすれば、石原と日本軍の違いは、追いかける指標の違いである。

・戦略の失敗は戦術では取り戻せないので、有効な指標を見抜く指標の設定力こそが最大のポイントとなる。

・勝利につながる「指標」をいかに選ぶかが戦略である。性能面や価格で一時的に勝利しても、より有利な指標が現れれば最終的な勝利にはつながらない。

●「体験的学習」では勝った理由が分からない

○大局観に欠け、部分のみに固執する日本軍

・日本軍側には作戦命令において、戦略が存在しないか、あっても「誤った指標」を追いかけていると判断できる。一方米軍は、「空母を最優先で沈める」という指標を含め、全体の戦果につながる効果的な指標を設定している。

○なぜ日本企業は一点突破、全面展開なのか?

・アメリカでホンダがスーパーカブという「小型で気楽に乗れる」という新しい指標を偶然発見した。これは体験的学習の積み重ねによる軍禅の発見が生み出した成功。

・日本軍にも通じる点だが、「一点突破、全面展開」という流れを日本人と日本の組織が採用しがちなのは、戦略の定義という意味での論理が先にあるのでなく、体験的学習による察知で「成功する戦略」を発見している構造だからと推測できる。

・「体験的学習」で一時的に勝利しても、成功要因を把握できないと、長期的には必ず敗北する。指標を理解していない勝利は継続できない。

●同じ指標ばかり追うといずれ敗北する

○日本に欠けているグランド・デザインの視点

・「全体戦略」、組織全体が追いかける指標。

○日本企業が戦略を苦手にする理由

・伊那食品工業は寒天の用途拡大戦略をとり、単にヒット商品を狙うのでもなく、商品数を増やすのでなく売上増加を支える要因が「素材用途を拡大する」ことだと見抜いていた。

○マイクロソフトが世界制覇できた戦略

・マイクロソフトは「ソフトの互換性」「ネットワーク効果」を利用したビジネスモデル「プラットフォーム戦略」で成功した。これは、商品単体の性能を問題としないことで、モノづくり大国と言われた日本の製品が後塵を拝する大きな要因となる。

・体験的学習や偶然による指標発見は、いずれ新しい指標〈戦略〉に敗れる。勝利体験の再現をするだけでなく、さらに有効な指標を見つけることが大切。競合と同じ指標を追いかけても、いずれ敗北する。

 

 

今回からは鈴木博毅さんの「超」入門失敗の本質を取り上げます。この本は、太平洋戦争における日本軍の失敗の本質と現代における日本企業の戦略の失敗の本質を重ねてわかりやすく解説しており、非常に奥深く「なるほど」といえる内容でした。

今回のテーマは「なぜ『戦略』があいまいなのか?」です。今回もっとも印象に残ったのは「目標達成に繋がる勝利」を選ぶということ。目標につながらない勝利をいくつ重ねたところで、大局的な勝利は得られない。目標を定めたうえで、派手ではないが、一つずつ目標に繋がる勝利を得られるよう戦略を立てることが重要だということ。

そして、指標を明確にするということ。大局観をもち、全体を俯瞰して戦略をもとに指標を設定しなければならない。そして、成功体験からくる指標にばかり頼っていては、新しい角度から出てくる指標には対抗できない。成功による慢心をせずに成功要因を突き詰めたうえで次の指標を設定することが重要だと感じました。

投稿者: Masahiro Ito

サーフィンとマラソンをこよなく愛する自称ソーシャルサラリーマン。 自分自身がメディアとして発信できる新しい時代の波に乗るために奔走中。 伊藤人語では、読書初心者の方にポイントを紹介。 僕が薦める本に興味を持ってもらえればこれ幸いでございます。

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