世界の中心はどこにあるか−嫌われる勇気


個人心理学と全体論

・アドラー心理学では、身体の症状を心(精神)と切り離して考えることはしません。

心と身体は一体のものだ。これ以上分割することのできないひとつの「全体」なのだ、と考えるわけです。

・たとえばカッとなって他者を怒鳴りつけたとき、それは「全体としてのわたし」が怒鳴ることを選んだのです。

決して感情という独立した存在が、いわば私の意向とは無関係に、怒鳴り声を上げさせたとは考えません。

ここで「わたし」と「感情」を切り離し、「感情が私をそうさせたのだ、感情に駆られてしまったのだ」と考えてしまうと、容易に人生の嘘へとつながっていきます。

・人間をこれ以上分割できない存在だととらえ、「全体としての私」を考えることを「全体論」と呼びます。

 

対人関係のゴールは「共同体感覚」

・他者を仲間だと見なし、そこに「自分の居場所がある」と感じられることを、共同体感覚といいます。

・共同体感覚とは、幸福なる対人関係のあり方を考える、もっとも重要な指標なのです。

・二人の人間がいたら、そこに社会が生まれ、共同体が生まれる。
・私への執着(self interest)を、他者への関心(social interest)に切り替えていく。

 

なぜ「わたし」にしか興味がないのか

・「課題の分離」ができておらず、承認欲求にとらわれている人もまた、きわめて自己中心的なのです。

・「他者からどう見られているか」ばかりを気にかける生き方こそ、「わたし」にしか関心を持たない自己中心的なライフスタイルなのです。

・「わたし」は、世界の中心に君臨しているのではない。

「わたし」は人生の主人公でありながら、あくまでも共同体の一員であり、全体の一部です。

・アドラー心理学では、所属感とはただそこにいるだけで得られるものではなく、共同体に対して自らが積極的にコミットすることによって得られるのだと考えます。

・「この人はわたしになにを与えてくれるのか?」ではなく、「わたしはこの人になにを与えられるか?」を考えなければならない。

それが共同体へのコミットです。

・所属感とは、生まれながらに与えられるものではなく、自らの手で獲得していくものなのです。

 

叱ってはいけない、ほめてもいけない

・ほめるという行為には「能力のある人が、能力のない人に下す評価」という側面が含まれています。

・アドラー心理学ではあらゆる「縦の関係」を否定し、すべての対人関係を「横の関係」にすることを提唱しています。

・そもそも劣等感とは、縦の関係の中から生じてくる意識です。

あらゆる人に対して「同じではないけど対等」という横の関係を築くことができれば、劣等コンプレックスが生まれる余地はなくなります。

 

「勇気づけ」というアプローチ

・強制ではなく、あくまでも課題を分離したまま、自力での解決を援助していきます。

こうした横の関係に基づく援助のことを、アドラー心理学では「勇気づけ」と呼んでいます。

・いちばん大切なのは、他者を「評価」しない、ということです。

評価の言葉とは縦の関係から出てくる言葉です。

もし横の関係を築けているのなら、もっと素直な感謝や尊敬、喜びの言葉が出てくるでしょう。

・ほめられるということは、他者から「よい」と評価を受けているわけです。

そして、その行為が「よい」のか「悪い」のかを決めるのは、他者の物差しです。

もしもほめてもらうことを望むのなら、他者の物差しに合わせ、自らの自由にブレーキをかけるしかありません。

・「ありがとう」は評価ではなく、もっと純粋な感謝の言葉です。

人は感謝の言葉を聞いたとき、自らが他者に貢献できたことを知ります。

・人は「わたしは共同体にとって有益なのだ」と思えたときにこそ、自らの価値を実感できる。

これがアドラー心理学の答えになります。

 

人は「わたし」を使い分けられない

・まずは他者との間に、ひとつでもいいから横の関係を築いていくこと。そこからスタートしましょう。

・もしもあなたが誰かひとりとでも縦の関係を築いているとしたら、あなたは自分でも気づかないうちに、あらゆる対人関係を「縦」でとらえているのです。

・意識の上で対等であること、そして主張すべきは堂々と主張することが大切なのです。

 

 

まとめ

部下を褒めて伸ばす。

子供をしつけるためには、叱ることが大切だ。

 

自分の中でそれは本当にまぎれもない「常識」でした。

 

しかし、アドラー心理学では「叱ってもいけない」「褒めてもいけない」と説かれます。

これはどういうことだ??

読み進めれば、アドラー心理学ではあらゆる対人関係を

縦の関係ではなく横の関係でとらえると提唱します。

 

わたしたちは人間関係をとかく縦の関係で捉えがちです。

上司と部下

親と子

先輩と後輩。。。

 

縦の関係では良好な人間関係は築けないと説かれています。

人間関係を縦で捉えてしまうと、相手との比較のなかで劣等コンプレックスが生まれたり、
褒められたい。

尊敬されたい。

そんな自己承認欲求を満たすために、ありのままの自分とのギャップに苦しむこともあるでしょう。

 

複雑に入り組んだ人間関係の中で、対人関係をできるかぎり「横で捉える」。

まずは他者を「評価」しない、そして自分と向き合い自己を「評価」する。

他者の物差しの中で自分の存在価値を感じるのでなく、

絶対不可侵の自分軸の中で、貢献できていると感じることができることが幸福な人間関係なのでしょう。

 

 
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投稿者: Masahiro Ito

サーフィンとマラソンをこよなく愛する自称ソーシャルサラリーマン。 自分自身がメディアとして発信できる新しい時代の波に乗るために奔走中。 伊藤人語では、読書初心者の方にポイントを紹介。 僕が薦める本に興味を持ってもらえればこれ幸いでございます。

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